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人生100年時代の安心住まい|住宅寿命リスク

人生100年時代=住宅を長く使う時代。長く使うほど財布と環境へのメリットも大きくなるため、住宅寿命を伸ばすことが大事です。木造住宅の場合、構造に使う木・木質材料をいかに腐らせないかが住宅寿命を左右します。ここでは木の腐朽の観点から構造の耐久性・住宅寿命を考えます。一般社団法人住まいの屋根換気壁通気研究会理事長の神戸睦史さんに聞きました。

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どんなリスク?

木は濡れたままだと腐ります。木を腐らせる犯人の「木材腐朽菌」は、木に含まれる水分の割合=含水率が30%を超えると活発に活動するからです。柱や合板など構造に使われる木質材料も濡れたままだと腐ってしまい、強度が落ちたり変形したりして耐久性にも影響します。ここでは①雨漏り②内部結露③工事中の雨濡れの3つのリスクを紹介します。

①雨漏りリスク
「軒ゼロ住宅」が危ない

雨漏りは屋根や壁で発生しますが、現代の新築住宅で発生頻度が高いのは屋根よりも壁からの雨漏りです。

日本の伝統的な民家は軒が大きく出ています。これは日射を調整したり縁側を使うためでもありますが、雨風が外壁や屋根と壁に接する部分に当たりにくくするためでもあります。雨風がこの部分に当たり続けると外壁材が劣化し雨漏りに至ったり、防水処置が不徹底な場所から雨漏りするリスクが高まります。最近増えているキューブ型など軒の出がほとんどない「軒ゼロ住宅」はこの点が心配です。

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また、侵入した雨水は窓上や屋根・壁の接する部分に溜まることが多いのですが、軒が出ている場合は仮に軒先の木質建材が腐ってもそこだけ補修すればいい。軒ゼロ住宅は躯体内部まで水が浸入するリスクが高く、腐れ被害が拡大する恐れもあります。

②内部結露リスク
断熱材が濡れると危ない

柱や合板などの木質建材には一定の水分が含まれています。夏に温度が上がるとこの水分が蒸発し、壁の中の表面温度が低いところで冷やされて結露が起き、断熱材が濡れてしまいます。また、冬でも室内の湿度が高いと、水分が壁を通り抜けて壁の中で冷やされ結露が発生します。 

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この「内部結露」で断熱材が濡れると、断熱材が接している柱や土台も濡れてしまい、放置していると腐ってしまいます。カビやダニも発生し、健康被害の恐れもある。また、濡れた断熱材は本来の断熱性能を発揮しないこともあります。

③「工事中の雨濡れ」リスク
「築後1年」が危ない

前述のとおり木質建材は最初から水分を含んでいて内部結露の原因になる場合がありますが、現場での保管中や現場施工中に雨に濡れるとさらに水分を含むことになります。きちんとした住宅会社は保管中や施工中、雨に濡れないようシートなどで対策してくれますが、木質建材が雨ざらしのままの現場も少なくありません。

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この様な初期水分を多く含んだ木質建材の水分は新築から1年ほどの間に発散され、腐れの原因になります。実は築後1年のリスクが高いとも言えるのです。

どうやってリスクに備える?

基本は雨漏り・内部結露対策 「通気層」でリスクヘッジ
腐れを防ぎ耐久性を高めるにはどうすればいいのでしょうか。乾燥した木材・木質建材を選び、雨
ざらししないことが一つ。次に、雨漏りや内部結露を防ぎ木質建材を濡らさないこと。最近の住宅では、侵入した雨水を躯体内に入れないために「透湿防水シート」を、湿度が高い室内から壁の中に水分を入れないために「防湿シート」を張っています。ただし、その施工が雑だと効果を発揮しませんし、経年劣化のリスクもあります。最近は想定以上の雨風も発生しています。

このため、土台から屋根の頂部まで途切れることなく空気の通り道=「通気層」を設け、常に空気が流れるようにして木材・木質建材を乾かし、水分を含んだ空気を棟(屋根の頂部)等から外に出すことで雨水侵入による腐れをリスクヘッジします。

通気層はほとんどの住宅で採用されていますが、途中で空気の流れが遮られていることも多く、結露が発生する場合があります。軒先や小屋裏(屋根裏)など水分が溜まりやすい場所には、水分を排出するために換気孔を設けるべきでしょう。
 
カナダでは腐れが社会問題に 知識と技術もつ事業者を選ぶ
とにかく「木の家の大敵は水分」と覚えてください。カナダでは「軒ゼロ住宅」の雨漏り+腐朽被害が大きな社会問題となりました。日本では近年、高気密高断熱住宅の普及とともに、結露事故が増加傾向にありますが、潜在化したものも多くあります。私は住宅の耐久性を研究・実験するなかで、解体された木造住宅の多くに木の腐れ被害があること(シロアリ被害も)、通気層や換気孔が適切に設けられていない木造住宅では腐れ被害が起きることを目の当たりにしています。

「人生100 年時代」は住宅を長く使う時代。腐れは日本でも大きな問題になる可能性があります。住まい手の皆さんも耐久性に関心を持ち、正しい知識と技術をもつ住宅会社を選んでほしいと思います。


※本記事は雑誌「だん05」に掲載されています

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