SDGsと家づくり|エコハウスのサステナブルライフ
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SDGsと家づくり|エコハウスのサステナブルライフ

SDGsとは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」のこと。
気候変動や危機にある生物多様性、エネルギーや水、食料などをもっと持続可能に活用していくために、エコハウスには何ができるでしょうか?ノンフィクションライターの高橋真樹がSDGsに寄り添ったサステナブルな暮らしをする人たちから、そのヒントを探ります。※雑誌「だん10」から流用
文:高橋真樹 写真:野田雅也

外観

2019年夏に完成した店舗兼住宅。店舗と住居部分を合わせた広さは75坪。UA値は0.28、C値は0.3。窓は木製サッシとトリプルガラス。壁の断熱材には外側にロックウール、内側にセルロースファイバーが入っています。屋根の太陽光発電の容量は、店舗と住宅を合わせて9.9kW。仕様は、ドイツに学んだ高気密高断熱の「低燃費住宅」で、設計と施工は齋賀設計工務(埼玉県日高市)が手掛けました。

誰もがほっとできるサステナブルなカフェと暮らし
エコハウス仕様で店舗兼住宅を建てた、おしゃれなカフェがあります。大切にしているのは、食の安全性や地産地消、お客さんがほっとできる空間づくり。そして、エネルギーをできるだけ使わない調理と暮らしです。そのおかげで、コロナ禍でも無理なく営業を続けることができました。サステナブルなカフェと暮らしぶりをのぞいてみましょう。

何度も訪れたくなる居心地の良さ
木製のドアを開けると、ショーケースに並ぶ色鮮やかなエクレアに目を奪われます。風情ある街並みから、「小江戸」と呼ばれる埼玉県川越市。蔵造りが続く観光ルートのほど近くに、ハッとする外観の建物ができたのは、2019年夏のことでした。1階がカフェで2階が住居の「CAFE&SPACE NANAWATA(ナナワタ)」です。看板メニューは、ちょっと贅沢気分を味わえるナイフとフォークで食べるエクレア。長年、お菓子づくりの指導をしてきたオーナーシェフの岡村淑子さんは言います。「エクレアって、お子さんから年配の方まで嫌いっていう人があまりいないように思うんです。エクレアをメインにしたお菓子屋さんなら、特徴を出せるかなと」。穏やかに語る淑子さんの横で、「当初はエクレアのお店をやると聞いて、大丈夫かなと半信半疑でした」とパートナーの幸宣さんが笑います。それでもオープンから1年半が経つ今ではすっかり地域に愛される存在となり、焼き上げたエクレアが完売する日も珍しくはありません。

淑子さんのこだわりは、食の安全性やできるだけ地域産の食材を使うこと。ひとつひとつ素性をたどり、可能な限り生産者を直接訪れて交流し、納得のいくものを選んでいます。例えばエクレアやふわふわのオムライスに使う卵は、ナナワタのある埼玉県で放し飼いで育てられた鶏の卵です。この日訪れた常連さんは、週に2回は通っているそう。

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人気の理由は、お菓子や料理の味だけではありません。無垢材と白い漆喰に覆われた店内は、日常を離れてほっとできる空間になっています。また、入って右側の大空間はアート作品の展示ギャラリー。展示作品は、美術館の学芸員をされている幸宣さんが作家を選び、3カ月ごとに更新するという本格的なものです。コロナ前までは、演奏家を招いてクラシックのコンサートも開催していました。お菓子づくりにギャラリー、そしてコンサートと、さまざまな要素を兼ね備えたご夫妻の理想がつまった店舗兼住宅は、高気密高断熱のエコハウス仕様になっています。しかし、建築計画を立てた当初、ご夫妻は頭を悩ませていました。

室外機10台分のエネルギーを消費?
立ちふさがったのは、ランニングコストです。厨房には大きなオーブンが2台入る予定でした。2台がフル稼働すると、それだけで5kW/hを超える大量の電力を使用することになります。さらに、大型エアコンも複数台を動かさなければなりません。淑子さんは、当初相談していた建築家やメーカーから、この広さの店舗と住居のエネルギーをまかなうには室外機が少なくとも10台は必要だと言われて驚きました。「商業施設では大量の電力やコストがかかるのは常識とのことでした。エネルギー消費を抑えることを優先すると、できるメニューが限られてしまうと言われ、悩みました」(淑子さん)。太陽光発電で電力の一部をまかなうにしても、それだけでは不十分でした。

何とかできないかと模索していたとき、偶然エコハウスの存在を耳にしました。淑子さんは、出合いの衝撃を語ります。「知人から暮らしのエネルギーが少なくて快適に過ごせる家があると聞き、これだ!と。その日は寝ないで、その知人のブログをぜんぶ読みました。求めているものがここにあった!という感じで興奮して、翌朝にはもうその工務店に連絡していましたね(笑)」。

エコハウス仕様にすれば、冷暖房などのエネルギーを大幅に抑えられ、太陽光発電の電気だけでも調理に使うエネルギーの大部分をまかなうことが可能になります。実際、現在は晴れていれば調理のエネルギーを太陽光発電でまかなえている日もあるそうです。室温が一定であれば、エクレアのショーケースの温度管理にも必要以上にエネルギーを使わずに済みます。温湿度が一定の建物は、アート作品の展示や保存にも最適です。そして壁や窓が厚いため、中で演奏会を行なってもご近所迷惑になる心配がありません。ご夫婦のやりたいことが、エコハウスならすべて実現できることがわかりました。

緊急事態宣言下でも営業できた理由
2019年夏には住居部分が完成し、その年の10月にカフェがオープンしました。エクレアはすぐに評判となり、コンサートのチケットも売り切れるほどに。また、はじめて迎えた冬は、お客さんが店内にいる限りほとんど暖房を使うことはなく、電気料金は驚くほど安く抑えられました。順風満帆に見える船出でしたが、翌年春には新型コロナウイルスの感染が拡大。緊急事態宣言が出されてからは、営業を続けるかどうかの岐路に立たされました。しかしここでも、エコハウス仕様にしたメリットが生きました。

「コロナで、改めてエネルギーのことを意識するようになりました。経営的にものすごく助かったのは、ランニングコストがほとんどかからないことです。店を開けてもデメリットがないので、開けることを選択できました」(淑子さん)。

当時は店内で飲食するお客さんは激減したものの、エクレアや焼き菓子のテイクアウトを買いに来るお客さんがむしろ増え、経営に大きなダメージはありませんでした。

店内

コロナ禍で気づいたエコハウスのすごさは、換気についても同様でした。一般的な飲食店は、夏や冬にドアや窓を開けっぱなしにしたり、補助金をもらって換気扇を後付けして、換気をしながら空調をかけています。でもそれでは十分な換気ができない上、せっかく作り出したエネルギーをドアや窓から捨ててしまうことになります。

このカフェでは、ダクト式の熱交換換気装置を導入しているので、ドアや窓を開けずかつ温度変化を最小限にしながら、効率的な換気ができています。換気装置の優秀さは、コロナ禍で実感しているとのこと。

お客さんはそうした仕組みを知っているわけではありませんが、「なぜだか居心地がいい」、「長くいてもリラックスできる」という感想を、多くの人が口にしています。特に冬は暖房をほとんど使わないこともあり、湿度が適切に保たれ乾燥しません。「暖房も加湿器も使っていないと説明すると、びっくりされますね。また帰り際にドアを開けると、外がこんなに寒かったんだ!と驚かれる方も多いです」(淑子さん)。住宅の話につづく

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なお、全文は高断熱住宅専門誌「だん」10に掲載しています。エコハウスに関心をお持ちの方はぜひ本紙をご覧ください。


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