jimosumu(ジモスム)
SDGsと家づくり|サステナブルな東北のエコタウン
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SDGsと家づくり|サステナブルな東北のエコタウン

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SDGsとは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」のこと。気候変動や危機にある生物多様性、エネルギーや水、食料などをもっと持続可能に活用していくために、エコハウスには何ができるでしょうか?ノンフィクションライターの高橋真樹が SDGsに寄り添ったサステナブルな暮らしをする人たちから、そのヒントを探ります。※雑誌「だん11」から流用
文:高橋真樹 写真:鈴⽊省⼀

高断熱住宅専門誌「だん」11より

外がマイナスの気温でも、室内は裸足で過ごせるほど暖かい。岩手県紫波町のオガール地区には、そんなエコハウスが一棟ではなく、50棟以上も並んでいます。また、歩いてまわれるエリアにはJRの駅や広場、図書館、産直市場、飲食店などが連なり、人で賑わっています。今回は、そんなエコタウンに住む人や家づくりを手がけた人たちの声を通して、循環型のまちづくりを紹介します。

循環型のまちづくり
町有地オガール地区はかつて、除雪時の雪捨て場でした。そこが2009 年以降に再開発され、現在では年間100 万人が訪れる人気スポットになっています。2017年に全ての事業棟が整い、新しい町役場のほか、産直市場や保育園、クリニック、図書館などもあり、生活や子育てに便利なエリアになりました。「オガール」という名前は「成長する」という意味の方言「おがる」と、フランス語で駅を意味する「Gare(ガール)」を組み合わせた造語です。

特徴は、自治体と民間が協力し合う「公民連携」という手法を使い、補助金に依存せず再開発を行ったことです。また、「循環型のまちづくり」をコンセプトに、使われるお金や資源、エネルギーなどが、できるだけ町内で循環するように工夫されています。例えば、建築物には地元産の木材がふんだんに使用されました。また、地中にパイプを埋め、熱供給を行うシステムを導入しています。地域の木質チップを燃やした熱を利用して温水や冷水をつくり、パイプを通して循環させることで、冷暖房の熱に利用する仕組みです。これを「地域熱供給システム」と呼びます。外部から燃料を買わずに、地元産木材で冷暖房がまかなえます。

広場や飲食店があるエリアから道を一本挟んで、高気密高断熱のエコハウスが56棟並ぶエコタウンがあります。エコタウンの土地は、町が住宅建築の際に条件を付けて個人に販売しました。条件は、建てる業者は町が指定した地元の工務店の中から選ぶこと、地元の木材を80%以上の割合で使うこと、そして高気密高断熱のエコハウス仕様で建てることなどです。また、エコタウンでも地域熱供給の暖房、給湯を使うことができます。使うかどうかは施主が選択できますが、現在約8割の家庭がこのシステムを利用しています。エコタウンでも、資源(木材)やエネルギー(省エネ、暖房)、雇用(工務店)といったものを、できるだけ地域で調達するというコンセプトが徹底されているのです。

エコタウンでの豊かな暮らし
エコタウンの住宅に住むご家族を訪ねました。こちらに住んで4年になる公務員のAさん一家は、ご夫婦とお子さん2人(10歳と4歳)の4人家族です。家を建てるときの条件については、役場の担当者から受けた説明で納得したと言います。「初期費用はかかっても、ランニングコストが減るので、長期で見ると費用は変わらないとのことでした。それなら快適な方がいいなと」。

性能の高さは、実際に暮らして実感したそうです。特にこの地域の冬は、マイナス10℃を下回ることがあります。でも、家の中で「床が冷たい」「部屋を移動すると寒い」といった様な温度ムラがなく、子どもたちは一年中裸足ですごしています。Aさん宅の暖房は、地域熱供給システムを利用しています。各部屋にあるパネルヒーターのスイッチを入れると、温水が流れて暖める仕組みで、心地よい上に値段も安く済んでいるそうです。Aさんは、「事前に聞いたランニングコストの安さは確かでした。うちは3.5キロワットの太陽光発電をつけていて、売電収入があるんです。年間トータルでは、売電収入の方が光熱費よりも多いんですよ!」と嬉しそう。

Aさんの趣味である音楽や映画鑑賞のために、こだわってつくった自慢のオーディオルームも見せていただきました。音がちょうどよく響くよう、全面に無垢の木材が張られています。スピーカーは正面だけでなく、天井にも設置。大型スクリーンを下ろせば、まるで映画館のようです。外に音が漏れないので、大音響で聞いてもご近所迷惑にはなりません。

Aさんご家族は、日常的にオガール地区にある施設を利用しています。子どもたちはここにある保育園に歩いて通い、休日にはお子さんと図書館を訪れるとのこと。エコハウスに加え、こうした充実した環境がより豊かな暮らしを成り立たせています。Aさんが、家や立地についての不満がまったくないというのも頷けます。

地元の工務店が建てる高性能住宅
Aさんの家を設計したのは、設計士の作山良枝さん(作松建設)です。町役場からオガール地区に家を建てる事業者に登録する案内通知が届いた当時の作松建設は、リフォーム工事が中心で、新築はほとんど扱っていませんでした。作山さん自身も、資格はあっても新築の設計は未経験でしたが、これからは新築に対応できるようになった方がいいと考え、事業者として登録をしました。

とはいえ当時の作山さんは、建築条件となっていた高気密・高断熱についてほとんど知りませんでした。「講習会に参加し始めた後で、建物の燃費や気密の取り方など、覚えることがすごくたくさんあって、これは大変だ!と思いましたね」と苦笑します。周囲の工務店も同じような状況でした。

つづきは本誌「だん」11でお読みいただけます。


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