感性と技術力があらわれる造園の仕事。
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感性と技術力があらわれる造園の仕事。

建築と密接に関わる庭。造園の仕事の現場とはどんなもので、庭をつくる人は、どんな工夫を凝らしながら仕事をしているのでしょうか。造園会社として長い歴史をもつ岩城(東京都世田谷区)に話を聞きました。
(「和モダンvol.11」(2018年12月発行)に掲載)

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庭から保養施設を見たところ。多行松たぎょうしょうが庭のシンボルに。

露天風呂から見る波の石組と多行松

静岡県熱海市の高台に位置する企業の保養施設。外国からのお客様も招き入れるゲストハウスとして新たに生まれ変わるために、岩城いわきが庭の設計・工事を担当することになりました。建築のマスタープランを元に、露天風呂から眺める庭や、そして周遊できる庭を検討。設計部の乗村京子さんによりプランニングが進められました。

少し下りの傾斜のある敷地からは海を眺めることができます。もともとあった芝生の広々としたイメージを残すこと、海の近くであるこのロケーションや日本らしさが感じられることなどに配慮しつつ、重すぎる和の雰囲気にならないようにしたかったといいます。

完成した庭は、2本の松を残し、海の見えない露天風呂には波を感じられるような石を配置。また、大地の力強さや樹木の生命力にあふれた特徴的な枝ぶりをもつ多行松をスカルプチャー的に植栽しました。敷地周囲はイヌマキの木が大きな壁になっており、周囲とは別の空間へといざなう役割も兼ねています。イヌマキは潮風に強いため用いたものだそうです。(中略)

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今回の造園計画図

現場で感性が生かされる

「造園の仕事は自分の個性を生かすことができる仕事」と、取締役技師長の市川泰正さんはいいます。担当する職人によって、感性・技術力が如実にあらわれ、趣の異なった庭になるそう。設計者と意思疎通を図りながら、あるいは喧嘩しながら進めるということもあるし、一方、施主の意向というのも考える必要があります。飛び石の置き方ひとつとっても、職人によてって微妙に趣が変わってきます。

造園の仕事は、現地での調整が欠かせません。実際に石や樹木を置いてみて、微調整を重ねていく。そこで職人の感性が重要となってきます。現場で見て、感じて、進めなければならず、施工する前にいかにイメージがつくれるかが勝負になるそう。

石や植木も産地に赴いて、自分の目で見て選ぶと乗村友光さんは話します。それも重要な仕事のひとつで、採石場の無数の石の中から、その庭のための一石を見つけ出します。石や樹木についての知識もしっかり持っていなければなりません。樹木であれば、枝ぶりや香り、成長の早さに至るまで。その庭をイメージして、いかにそれに調和する材料を選べるかが重要です。この庭の石も岐阜県中津川市の蛭川御影石を選び、高さ・傾きを慎重に検討・調整して組んでいきました。

広範囲にわたる造園の仕事

造園の仕事の範囲は広く、滝組や池工事、石積や竹垣、植栽工事や洗い出しなど、土木分野に重なるものも含まれます。使う道具には、左官や大工道具と同様のものも見られました。これらのほか、重機や電動工具(ドリル類、チェーンソー)なども含まれ、ハーネスをつけて木に上って手入れを行うこともあります。

市川さんや乗村さんら、岩城の現場を担当する職人は、現場では監督の仕事や安全管理も行いつつ、自身も職人としての仕事をこなします。さまざまな技術が必要となる職人として一人前になるには、日々の仕事の中で習得していくのはもちろんのこと、努力・探求心もまた不可欠だといいます。後輩指導という立場が多くなってきている市川さんは「実は自分で手を出したくて仕方ない」と話します。

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造園道具の数々。

庭師にとって大切なこと

庭の仕事は、掃除・穴掘りや砂利を運ぶなどの下仕事から始まります。そして親方の仕事を、手元を見ながら勉強していきます。「もう少し右へ動かせ」などという親方の指示を受けながら、学んでいくー。それからだんだん小さな庭を任せてもらえるようになるそう。昔は10年仕事をして、やっと一人前だといわれていました。

「この仕事で大切なのは信用」と市川さん。特に個人邸の庭は、間近で常に見られながら進めていく仕事なので、自分が納得するものをつくりつつ、お客様にもいいと思ってもらわなければなりません。そのためにいかに感性を磨いていくかも重要なポイント。植木は自然を表現する材料のため、自然の木の生え方のよさなどを見る目を持っている必要もあります。よい庭を見て、常に勉強することも必要なのだといいます。

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建物前のデッキから海に向けて傾斜する庭を見下ろしたところ。
建物近くには、ヤマボウシ・アオハダ・アオダモなどの
落葉樹を植えています。

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浴室前には、波をイメージした石を配置しています。

岩城
小川治兵衛の甥である創業者・岩城千太郎が東京に「岩城造園研究所」を開設してから約80年の歴史を持ち、高い技術力を持つ造園会社。

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写真左から、市川泰正さん(取締役技師長)、
乗村京子さん(設計部)、乗村友光さん(工事長)。

(写真/永野一晃)

上記の記事は「和モダンvol.11」(2018年12月発行)はに掲載しています。特集は、庭から考える家づくり。庭のつくり方の解説をはじめ、住宅と庭が融合した事例もたくさん掲載しています。






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