和のこころを現代のカタチに。暮らしに寄り添う「水引」の魅力
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和のこころを現代のカタチに。暮らしに寄り添う「水引」の魅力

四季を移すオリジナルスタイル

日本の伝統文化のひとつである「水引」。もともと熨斗袋にかけられる水引は和紙をこよった紐で、人の心や絆を結ぶ思いが込められたものでした。お正月や冠婚葬祭などハレの日のイメージが強いその水引を「日常で楽しめる水引に」と、身近なアクセサリーやインテリアにアレンジしたのが金沢市の水引作家・廣瀬由利子(自遊花人代表)さんです。

テーマは、和とモダンを融合した「Wadern STYLE(ワダンスタイル)」繊細なグラデーションで展開する250色以上の色彩、形やサイズを問わない造形のバリエーションが表現を無限にしています。近年では、石川県内の山代温泉や山中温泉の宿泊施設が、客室の室礼(しつらい)やロビーのインテリアとして採用し、和のもてなしの心を伝えています。

風炉先

茶室に置いた風炉先屏風。
色調で季節感を演出することができます。

玄関ドア

ホテルや旅館などではドアや壁などのインテリアにも採用。

水引の歴史には諸説ありますが、古くは今から1400年も前の推古天皇の時代。遣隋使の小野妹子が持ち帰った贈物に紅(くれない)の麻ひもが結ばれていたことに始まるといわれています。また、水引の生産地として知られる長野県飯田市では300年以上も伝統産業を受け継いでいます。紙の原料である楮(こうぞ)や清流に恵まれ、良質な和紙がつくられることから、今でも国内トップシェアを誇り、大相撲や歌舞伎の髪結いにも使われています。

廣瀬さんの作品も、この飯田市の水引がはじまり。ところがあるとき、希望の色を注文すると「その色は需要がないから生産できなくなった」といわれ、「伝統文化を絶やしてはならない」との危機感から東奔西走。糸巻技術を持つ地元の企業との共同開発により、2015年に独自素材の水引が完成。強度や柔軟性に富むオリジナルの水引は、「四季の糸」と名づけられ、現在150色以上の展開でいまも増え続けています。「色のバリエーションが増えたことで、季節が表現できるようになった」と廣瀬さん。水引の可能性は一気に広がりました。

四季の糸

四季の糸として開発したオリジナルの水引。

無限に広がる表現のバリエーション

廣瀬さんが生まれ育った金沢は、加賀藩のもとで結納飾りなどの水引が伝承され、いまも古都の文化として息づいています。その一方で、廣瀬さんの作品は、結び方の基本である「あわじ結び」と「珠結び」を応用したオリジナルであり、その原点は海外の人々との出会いにあります。

制作手元

水引の結びは1本1本の微調整が必要なため、作業は繊細。

20年ほど前、文化交流の一環で訪れたニュージーランドで、日本の文化を教える母のアシスタントとして水引を教える機会に恵まれました。日本で基本の結びを覚え、ラッピングの技術として実演しながら伝えたところ、現地の人々は自由にアレンジして創作を始めました。固定元年がないからこその自由な発想に創作意欲をかきたてられ、オリジナルの作品づくりをスタート。

水引を結んだり緩めたりと、試行錯誤を繰り返すうちに平面や立体のユニークな作品ができあがり、2004年には石川県デザイン展奨励賞、翌年は工芸都市高岡2005年クラフト展審査員賞、2009年には水引を刺繡糸のように使う、「刺し水引」で特許を取得するなど、多くの手仕事が認められるようになりました。

「伝統工芸は日常に使われてこそ、後世のに残るもの」との思いから、作品はイヤリングやネックレス、バッグなどの服飾品や、トレーや照明、風鈴、衝立などのインテリアまでさまざま。色のバリエーションが増えると、春の新緑や秋の紅葉、冬の雪景色など、四季の表現が広がり、「つくればつくるほど水引の魅力にのめり込んだ」と廣瀬さん。

古くからは慶弔の思いを結びの形や色を通してて伝えてきた水引。手のひらの中で世界とつながる時代に、つくり手たちが1本ずつ手で結んで完成させる繊細な美しさにも、日本の手仕事の魅力が秘められています。

廣瀬由利子

廣瀬 由利子(ひろせ ゆりこ)
1967年金沢市生まれ。関西学院大学・大学院でキリスト教美術史を学ぶ。独学で水引を学び、2011年に株式会社自遊花人設立。山名温泉の作品が、いしかわインテリアデザイン賞2017「石川県知事賞」を受賞。その他受賞多数。
自遊花人
石川県金沢市清川町7-9
https://www.jiyukajin.co.jp/

上記の記事は「和モダン12」内の特集・和のある暮らしに掲載しています。そのほかにも、和の空間にあう小物を紹介していますので、ぜひご覧ください(^^)/

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