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フィンランドの暮らしと住まい~海外住宅事情とライフスタイル①

日本では2年ほど前くらいからサウナブームが続いていますが、サウナの本家といえばフィンランドですよね。高断熱住宅専門誌「だん」で過去に掲載した「海外事情とライフスタイル~フィンランドの暮らしと住まい」を転載します。

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こんにちは。フィンランドのヘルシンキ在住の建築士・大村裕子です。
もともと、日本で輸入住宅メーカーに勤務し、設計の仕事をしていましたが、自身の目で北欧の住宅やライフスタイルを見たいと思い、まず2012年にスウェーデンに約3か月滞在しました。

フィンランドに移ったのは2013年のこと。設計事務所で住宅やサウナの設計に関わったのち、北欧の建築視察専門の旅行会社を経て、再び設計事務所で働いています。

フィンランドは、共働きが当たり前。残業はせずに、定時で帰宅するのが普通です。残業をしたらその分、他の日は早く帰ります。金曜日を残業の調整にあてる人が多いので、金曜日は14時を過ぎると家路につく人の姿が目につきます。

定時で仕事を終えたら、趣味や運動、子育てに時間を使います。ヘルシンキ市営の温水プールは、朝6時半から夜は21時まで開いていたり、スポーツジムも平日は夕方、17時過ぎが最も混む時間帯だとも聞きます。同僚とお酒を飲みに、というのもあまり一般的ではありません。

また、ほとんどの企業は、7月に4週間の夏休みを取ります。デパートやレストランのような業種でも、シフトを組んで、6月や8月にずらしながら4週間の休みを確保しているようです。

日本と違う住宅事情
フィンランドの住まいと、日本の住まいはどう違うのか、具体的に見てみましょう。

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まず、冬が長い国ですから、玄関にはコートをかけるクローゼットが欠かせません。家族の分はもちろん、来客のコートもかけられるだけのスペースが必要です。日本と同じように、室内に入るときは靴を脱ぎますが、段差はなく室内・室外の境界はとてもあいまい。玄関マットの辺りで靴を脱いで、中に入ります。

日本との大きな違いは設備。冷房はなく、セントラルヒーティングが多いです。またリビングには、セントラルヒーティングにプラスして薪ストーブが設置されている家もあります。また、共働きが多いせいか、キッチンにはビルトイン型の食器洗い乾燥機やオーブンが必ずついています。私はスウェーデン、フィンランドでホームステイをしましたが、どちらのホストファミリーも共働きでした。週末に料理を作り置きしたり、朝の限られた時間でケーキを焼いたりと、時間をかけずに食事を楽しむ姿が、強く印象に残っています。

洗濯物は、冬は雪が降ることもあって、室内干しか、乾燥機を使うのが基本。意外だったのが、マンションでは洗濯機を持っていない人がいたことです。実は、多くのマンションには共同のランドリーがあり、予約すれば大型の洗濯機や乾燥機を利用できるのです。

北欧の開口部
北欧の冬は、極端に日照時間が短いです。ヘルシンキだと、冬至のころは日の出が9時過ぎ、日没は15時。寒さも厳しいので、光を取り入れ、熱が逃げるのを防ぐためにも、窓はとても大切な要素なのです。

フィンランドでは、内側に開く窓が多く使われます。日本のような引き違い窓は、ほとんど見かけません。窓は二重になっていて、合計3枚のガラスが入っていることが多いです。大きなFIX 窓(はめ殺し窓)の横に、細長い「換気ドア」を設けることもあります。寒さや音対策のため、玄関ドアが二重になっている家も少なくありません。

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このところ、トレンドになっているのがガラスバルコニーです。バルコニーの手すりより上に、開閉できるガラス扉を取り付けたもので、新築の集合住宅では必ずといっていいほど見かけます。戸建て住宅でも人気があります。

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バルコニーは、テーブルやチェアを置いて、第二のリビングとして使います。夏はガラス扉を開け放ちますが、春や秋は扉を閉めて、太陽の光を浴びながらお茶を楽しんだり、くつろぐことができるのです。赤ちゃんをバルコニーで寝かせるという人もいます(フィンランドでは、赤ちゃんを外で寝かせる習慣があるのです)。

木造の国・フィンランド
日本と同様、森林が国土の大部分を占めるフィンランドでも、木造建築はとても身近な存在です。元々丸太を使ったログハウスが、伝統的なフィンランドの住宅でした。近年、建築基準が変わったので、高層の集合住宅や学校・幼稚園など、大きな建築物も木造で建てられることが増えています。

CLT( クロス・ラミネーティッド・ティンバー。ひき板を、繊維方向が直交するように貼り合わせた木質パネル)が使われる機会も増えています。中央部のユバスキュラには、2014年、OOPEAA 設計事務所の設計による8階建ての集合住宅が木造で建てられました。構造はCLTで、外装にも木材が使われています。

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2015年には、ヘルシンキの隣にあるヴァンター市に、木造7階建ての集合住宅が完成しました。全186戸と、北欧では最大級の規模を誇ります。ラッキーなことに、工事中の現場を見学する機会を得ましたが、7階まですべて木造とは信じられない思いがしました。ただ、石膏ボードが張られていたため、インテリアからは木が感じられないのが、少々残念ではありましたが……。

とはいえ、環境にやさしく、軽量で工期も短縮しやすいCLTは、今後ますます使われる機会が増えていくでしょう。

リノベ事情とお国柄
日本だと、リフォーム・リノベーションはプロに頼むのが一般的ですね。しかし、フィンランドの人々は自分たちでわが家をリフォーム・リノベーションすることが多いのです。

国内に130の店舗を構えるホームセンターk-rauta(コーラウタ)が取ったアンケートによると、78%もの人が、巾木の取り換えや壁の塗装、壁紙の張替えのような小さなリノベーションができると答えています。さらに、フローリングを張ったり、キッチンを取り付けるといった、大きな工事も、13%の人が自分でできると答えています。私も、友人や同僚から、こんな話を聞きました。

「先週末は、彼氏の家の外壁を塗っていた」
「キッチンを自分たちで買って、夏休みに主人が取り付けてくれた」
「自宅のサウナを作ってるんだ」
「自分で設計して材料を買い、サマーコテージを建てている。多くの部分は主人が作っているの」

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夏休みの長さや、人件費の高さなど、理由はいくつか思い浮かびますが、「自分でできることは自分でやった方がいい」という意識が強い人が多いのでしょう。とにかく、プロではないのにリフォーム・リノベーションが得意な人の多さには、驚かされるばかりでした。ちなみに、リノベーションで困った時に必要な部品を買ったり、アドバイスを受けることができるRAKENNUSAPTEEKKI(ラケンンヌスアプテーッキ/日本語で建築薬局という意味)と呼ばれるお店もあります。

サウナ~日本人にとってのお風呂
さて、日本人が大好きなお風呂ですが、フィンランドでは、シャワーだけの家が多いです。その代わり、必ずと言っていいほどあるのがサウナです。毎日から週1回程度まで、頻度こそまちまちですが、日本人にとっての浴槽に近い存在だと感じます。

フィンランドのサウナは、サウナストーンにひしゃくで水をかけて暖めます。水をかけた瞬間、温度が上昇して蒸気が広がり、ミストサウナのようになるのです。入り方も日本とは違います。暖まったら、ベランダやテラスに出て涼む。少し寒くなってきたら再びサウナに入る――これを何回か繰り返すのが、フィンランド流です。

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なので、サウナからシャワー室を通ってテラス、バルコニーに直接出られるプランがほとんどです。サウナの中のベンチは、座るだけではなく横になることもあるので、最上段は深め(850㎜~900㎜)なのがポイント。

戸建て住宅では、2畳前後のサウナが一般的です。集合住宅でも、各戸にサウナを設置することが多く、そうではないマンションにも、共同のサウナがつくられます。地下にあることが多いですが、最近では最上階の、眺めがよいところに配置することも増えています。

※本記事は「だん06」に掲載されています

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