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家づくりで人気の「自然素材」を少しマニアックに解説ー実は定義がぼんやり

戸建てを建てる、買うなら、自然素材の木の家がいい。よく聞く要望です。
ですが、自然素材ってなに?という問いに答えるのは、実は結構難しいのです。
ここでは、自然素材の基本について、ざっくり、でも少しマニアックに解説します。

業界でも自然素材には明確な定義がない

住宅業界においては、木、土、紙などの自然由来の素材やそれを使った建材を自然素材と呼んでいるようです。
「いるようです」というのは、明確な定義がないからです。

なぜ難しいのか、また定義がないという例を挙げましょう。

業界では「無垢材:むくざい」という言い方をするのですが、山から切り出した木を乾燥し切って形を整えた(「製材:せいざいと言います」)だけの木材は、たしかに自然素材と呼べます。

製材

無垢材は柱に使ったり、床や壁、天井に張ったりするのですが、無垢材を長持ちさせるために防虫防蟻薬剤・防腐薬剤で保護したり、見栄えや耐久性を良くするために塗料を塗ったりすることも少なくありません。
こうした薬剤や塗料には化学薬品が使われていることが多く、これらで処理した無垢材は自然素材といえるのか悩ましいところです。
ですが現状では自然素材にくくられることが多いです。

化学薬品といっても一定の基準をクリアしているはずなので、その場合、人体や環境にハイリスクなものは除外されています。
健康に不安があるなら、もしくはより高い安全性を求めるなら、化学薬品を使わない、もしくはリスクのある化学薬品を極力使用しない防虫防蟻剤・防腐剤や塗料などを選択するのといいでしょう。

つまり、どこまで「自然」(天然)性にこだわるか、さらに言えば化学薬品を許容するか、低リスクを求めるかに応じて、使う素材・建材を選択するということです。

自然素材の家→新建材の家

もともと日本の家は自然素材の木の家でした。
無垢材で柱を建て、柱の間を土や無垢材の板で埋め、板や瓦、カヤなどで屋根を葺く。
床も無垢材や畳。
紙と木でできた障子やふすまで部屋をゆるやかに仕切る。
漆喰:しっくい、漆:うるし、柿渋:かきしぶ、ベンガラなどで仕上げで保護・着色し、米ヌカなどで床を磨いてメンテナンスしていました。

江戸時代の屋敷

ですが、戦後、家を大量に共有する必要に迫られ、大量生産しやすくそのコストを抑えるため、また現場の生産性を高めるため、さらには住む人のメンテナンスの手間を省くために、「新建材:しんけんざい」と呼ばれる、加工済みで接着や塗料などの化学薬品を使用する便利な建材が登場、あっという間に普及しました。

その代表が、無垢材をカットして接着材で貼り合わせた「合板:ごうはん」と呼ぶ板材で、壁や床などの構造部分の強度を高めるために使われています(「構造用合板:こうぞうようごうはん」と呼びます)。

合板とは
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E6%9D%BF

さらによく見かけるのはが、無垢材を接着剤で貼り合わせて表面を塗料でコーティングして汚れにくく・傷がつきにくくしたした「合板フローリング/複合フローリング」と呼ばれる床材です。
現在でも賃貸住宅やマンションの多くで使われており、皆さんが木の床材として認識しているのはこれかもしれません。

壁も新建材があたりまえになりました。柱のあいだには先ほどの構造用合板や「石膏ボード:せっこうぼーど」と呼ばれる強度が高い板材の建材を入れ、その上から施工しやすく汚れにくい樹脂製のビニルクロスを貼って仕上げることが一般的になりました。

シックハウス問題が自然素材ブームのきっかけ

挙げればきりがないほどこうした新建材化は進み、それに伴い住宅に使われる化学物質も増えていきました。

一方で、もともと日本の家は「夏を旨とすべし」と言われたように、内と外をゆるやかに区切り、また木製の建具が長く主流だったので、密閉性が低くスカスカでしたが、戦後アルミサッシが普及したり高気密エースホーム技術が普及するなかで、住宅の「気密性:きみつせい」が高まり、つまりは密閉性が高まってスカスカでなくなり、室内に化学物質が留まるケースも増えていきました。

そのなかで起きたのが、1990年後半から社会問題化した「シックハウス症候群」です。

皆さんも「シックハウス」という言葉は聞いたことがあるかもですが、おもに住宅の新建材や家具などに使われた化学物質で揮発しやすいものが室内に溜まり、頭痛や眼・鼻・喉などの痛み、めまいやはきけ、不快感、さらには化学物質過敏症などの症状を引き起こすことが確認され、社会問題となりました。

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[wikiペディア:シックハウス症候群]
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4

これをきっかけにおきたのが「自然素材ブーム」とも言える状況です。
住宅の健康問題への関心の高まりで、無垢材のフローリングや、土を主原料とする壁材、化学物質を使っていない・少ない塗料や保護材・防蟻材などのニーズが高まり、その素材感や見た目もあいまって再び一定のシェアを回復しています。

国も2003年にシックハウス問題対応するために建築基準法を改正、接着剤や塗料に多く使われていた「ホルムアルデヒド」と防蟻材に使われていた「クロルピリホス」いう薬品を一定規制。
ホルムアルデヒドの使用量を星マークで建材に表示したり、機械換気装置の設置を義務付けしたりといった対策をとりました。

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上記2つの資料出所:国土交通省

自然素材部ブームと建材メーカーの化学物質低減の努力もあいまって、現在はシックハウス問題は鎮静化しています
ただし、少量の化学物質に反応する人もいますし、また自然素材ー例えば木から出る香り成分が苦手な人もいます。

どこまでの「自然性」「低リスク」を求めるか

自然素材は、健康リスクが少ないことから再注目されました。
一方で、今も複合フローリングやビニルクロスが使われているのは、シックハウス問題以降安全配慮が進んだこともありますが、コストや施工性、そして住む人にとっても耐久性や手入れの楽さといったメリットがあるからです。

皆さんもこうしたこと、無垢材フローリングなら傷や汚れがつきやすい、隙間ができたりすることもある、ワックスがけや塗料の上塗りなど手入れも必要といったことと、どこまでの自然性、低リスクを求めるのかを天秤にかけながら、自然素材を選ぶのか、選ぶのならどのレベルの自然素材を選ぶのかを考えてみてください。

自然素材は見た目や風合い、呼吸性のメリットも

筆者は、化学物質ゼロまでは望みませんが、極力自然素材を選びます。

実際自然素材の家で暮らした経験がありますが、無垢材・無塗装の床は素足に心地よく、見た目もラフで好みに合いましたし、土壁ではありませんが塗り壁材と呼ばれる塗って仕上げる壁は、風合いも豊かで、夜の間接照明に映えました。
若い方は特に、健康面よりも、見た目や風合いから自然素材を希望する人が多い印象です。

また、エコロジー・エシカルな観点でも自然素材を選ぶ方もいて、このことについては回を改めて紹介したいと思います。

また、木材や土、紙には室内の水分を吸ったりはいたりする効果があり、つまりは呼吸するように水分を吸ったりはいたりして湿度を調整する効果があります。
それは素材にある細かな孔が水分を蓄えたり放出したりするからです。自然素材の木の家に入ったときに心地よさを感じたなら、それはこの効果かもしれません。
ただし、この孔が塗料や接着剤で塞がれてしまうと、この効果はうまく発揮されなくなります。

こうしたメリットも自然素材を選ぶ際のひとつの参考にしてください。


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