「心地よさ」を考えてみる。家で過ごすGWにはこの2冊をおともに。
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「心地よさ」を考えてみる。家で過ごすGWにはこの2冊をおともに。

今年のGWも地域によって遠出や外出の制限がかけられたことで、多くの人は昨年に続いて、家で過ごす時間が増えることになります。

家でできる趣味に没頭したり、模様替えや片付けをしたり、家族とおうち時間をどう過ごそうか…と考えている方も多いのではないでしょうか。この機会を、これまで時間がないと後回しにしてきた読書についやそうというという方に、「家の居心地・心地よさ」を考える2冊をご紹介します。いずれも住宅建築で著名な建築家の本ですが、なぜ住宅の本なのか?それはこの2冊とも家という空間の「心地よさのあり方」について追求しているからです。

自宅で過ごす時間が増えれば増えるほど、その場所の心地よさが日々の生活に及ぼす影響は計り知れません。今は家づくりを考えていない方も、本書で家という居場所について考察してみてはいかがでしょう。

伊礼智の住宅設計作法Ⅲ 「心地よさの ものさし

住宅建築家として人気の伊礼智(いれい・さとし)さんの住宅は、その開口部(窓辺)の切り取り方や空間の心地よさに定評があります。大きな開口部は言うまでもなく魅力の一つですが、小さな窓にも工夫が凝らされています。

例えば本書にでてくる「甲府の家」のキッチン横に設けられた小窓。この窓の外側はウッドデッキになっていて、ウッドデッキには造り付けのベンチがあります。ウッドデッキは第2のダイニングとしても使えるように設計されていますが、この小窓のおかげで外にいる人にキッチンから食事やドリンクの手渡しがスムーズにできます。また、調理をしながらふと横を向くと庭の緑が目に入るように。この窓は使い勝手だけでなく、そこで暮らす人の視線の抜けまで想定されています。

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次に印象的なのが「福島の家」の玄関脇の窓。玄関周りは焼杉が使われているため真っ黒でかたい印象ですが、この窓から明かりがともっているのが見えることで、温かみを感じさせます。あたたかく出迎えてくれているような、そんな印象とでも言いましょうか。

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伊礼さんの住宅によく登場するのが「永田格子」です。かつてお世話になった建築家の故・永田昌民さんが好んで使われていた格子を、伊礼さんなりに寸法を変えたものを、敬意を表してそう名付けたそうですが、この「永田格子」も今では伊礼さんの窓辺を彩る魅力の一つです。ただ窓があるというだけでなく、ここに格子をつけることで、お隣との距離を感じず、また日差しを適度に遮ってくれるだけでなく、格子から漏れる光の移ろいを楽しめたり。本書の「諫早の家」でこの「永田格子」について、伊礼さんご自身が解説されています。

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建築家・永田昌民の軌跡 居心地のよさを追い求めて

さて、本書に名前だけ出てくる建築家・永田昌民(ながた・まさひと)さんが手掛けた住宅、気になりますよね。

どんな家を設計した建築家だったのか、どんな人だったのか、なぜ今も永田さんの住宅が愛され続けているのか。

「永田さんは多くを語らなかった」。永田さんについて語る建築家のみなさんが口をそろえていう言葉です。だからこそ、建築家・建築史家・造園家、そして施工を手掛けた施工者(工務店)や住まい手(施主)にまで、多くの方に永田さんの手掛けた家について、また永田さんという人について語っていただいた本「建築家・永田昌民の軌跡 居心地のよさを追い求めて」をご紹介します。

本書の中で、建築家の堀部安嗣さんと横内敏人さんによる対談のこんな一説からも、永田昌民さんの住宅の魅力がうかがわれます。
※対談は永田さんの自邸で行われました

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地味の中の滋味 ――対談より抜粋
横内 世間一般からみたら、永田さんの建築って地味だと思うんですよ。
それはインテリアに至っても地味。でも地味であることはとても大事で、土に根ざした、むしろ滋味というか。根っこが生えてる。マイナスな意味で地味じゃなくて、建築も生き方に対する考え方も、滋味に富んでる。風土なり土地なり、日本という文化なりに根ざしている。そこをはずすと、人の生活にとっては余分なものが多くなって、本来の豊かさを得る時に、むしろマイナスになってしまうということを彼の建築は教えてくれてる気がするんですよね。
堀部 地味の中にある滋味。
横内 日本がすごく豊かになって、なんでも手に入る。建築のつくり方も多様化して、どんな材料も使えるし、表現の種類も多彩ですよね。でもそういう中で、あえて滋味を大切にする。その態度が、住宅を設計する人間にとって、基本的に大切にしなければいけないものなんじゃないかと思います。やはりその背景には、人間の豊かさは物では得られないという価値観がある。物質的な意味での家に、いくらお金をかけて凝ってつくっても、それでは豊かさにはつながらない。本来の人の豊かさは、家族との愛情だったり、何気ない日常生活の中のちょっとした幸せだったり、そういうものからしか得られない。
堀部 日常の中にこそ美しさと豊かさを見出してました。

寄稿:益子義弘/堀部安嗣/趙海光/倉方俊輔/三澤文子/横内敏人/田瀬理夫/永田佑子/小池一三

永田昌民という建築家が行きついた「居心地のよい家」とは?
「建築家・永田昌民の軌跡 居心地のよさを追い求めて」写真や図面も多いので、じっくり読み解いてみてください。

生涯164もの住宅を手掛け、今なおその住宅の魅力と人となりが語り継がれる建築家・永田昌民氏。あまり多くを語らなかった 永田氏の住宅の魅力はどこにあるのか、「居心地のよい家」を追求し続けた永田氏が設計をするうえで何を考え、どう表し、どう伝えていったのか。「新建ハウジングプラスワン」の連載と、手記やセミナー記録などに残された永田語録、自筆のイラスト、建築家対談から、建築家・永田昌民の軌跡を追う。

「心地よさ」はどう生み出され、どこに宿るのか。たっぷりと時間を使って、それぞれの建築家の設計思考を読み解いてみてください。
※掲載写真はすべて書籍からの抜粋です


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