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江戸末期の建築をいまに伝える新御殿・真田邸

「和風住宅」では、日本の伝統が息づく和の建築を時代背景とともに解説しています。今回は「和風住宅21」(2016年7月発行)から、真田氏十代の歴史をもつ城下町・長野県長野市松代町にある「真田邸」を紹介します。松代城の城外御殿であり、松代真田家の歴史と当時の建築をいまに伝えています。

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松代藩真田十代とは

関ヶ原の戦いは徳川方の勝利に終わり、真田昌幸・信繁は高野山に幽閉されました。昌幸はここで没し、信繁は豊臣方に味方して大阪城に入り、夏の陣において討ち死にしました。真田信之は父・弟と別れて徳川方につき、その功によって父・昌幸が築いた上田城とその領地を継ぐことを許されました。そして、1622年に松代に転封となり、松代10万石、沼田3万石を与えられました。後、信之の長男・信吉に沼田領を、次男・信政に松代領を継がせ、真田家はニ家に分かれましたが、松代の真田家は廃藩に至るまでの250年間十代にわたって続くことになりました。

真田家系図_data

松代城の城外御殿として

この真田邸は、9代藩主・幸教が、義母・貞松院(幸良の夫人)の住まいとして、1864年に建築した松代城の城外御殿。松代城内に花の丸御殿があったため、それと区別するために「新御殿」と呼ばれていました。

1862年、14代将軍・徳川家茂時代の参勤交代制度の緩和に伴い、妻子の江戸住まいからの帰省を許可。そこで松代にも屋敷が必要になり、造営された御殿です。参勤交代はすぐに旧制度に戻されたため、貞松院がここに住んでいたのは数カ月だけだったそう。のちに、隠居後の幸教もここを住まいとし、明治以降は伯爵となった真田氏の私邸となりました。1966年、12代当主・幸治氏により、代々の家宝とともに当時の松代町に譲渡されることに。

主屋、表門、土蔵7棟、庭園が江戸末期の御殿建築の様式をよく伝え、建築史の視点からも貴重な建物であり、松代城と一体のものとして、国の史跡に指定されています。座観式の庭園の四季の風情も見どころです。

奥が充実した空間

この真田邸は、庭園や土蔵などを含めた全体が現代まで残っている、数少ない御殿建築です。御殿建築は「表」(公的行事・儀式の空間)と「奥」(私的生活空間)に分けられますが、真田邸では表と同様に奥に重きが置かれているのが特徴。御殿建築には権威を示すための表を広く豪華にしている例が多いのですが、ここはもともと住居として建築されたこともあり、奥の空間が充実しています。奥の御化粧之間には唐紙や襖絵が多く用いられていて、特に御寝所に使われている唐紙は建築当初のもの。唐紙は、当時の最先端の流行デザインだったと思われます。また、風呂、便所、台所、女中、使用人の部屋など、生活に直接かかわる空間がよく残されていて、当時の暮らしを知ることができます。

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御寝所から御化粧之間を見たところ。
奥の間には松型の唐紙が使われています。

表と奥、格式による区別

御殿建築である真田邸は、表の空間と奥の空間がはっきりと区別されていました。御輿据之間から表座敷北側と御寝所北側にかけて廊下が続いているものの、その間には杉戸が設けられ、通常は開かれることはありませんでした。さまざまな意匠も表と奥とでは違っています。表に使われている唐紙は格式の高い菱形の唐紙なのに対して、奥の空間では松型の唐紙。また、松の唐紙でも部屋面は入側縁(廊下側)とは異なり、金色を施したものになるなど、違いが見られます。また、部屋の格式によって、釘隠しや金物なども違えているのがわかります。

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御輿据之間。表の空間は格式高くつくられています。

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表(東)側から見た杉戸。
表と奥を区切る結界となっています。

平成の保存修理

2004年には保存改修工事が行われ、改修前には老朽化のため、ごく一部しか見学できなかったものが、一般公開されました。礎石の補修、柱の根継ぎ、小舞を組んだ壁の修復など、できるだけ当時の材料、工法を用いて修理が行われたそう。また、藩士・酒井雪谷による障壁画がはずされていたものを、同等の複製を室内に建て込んだり、修復されました。障壁画は荘厳さを演出するために表座敷など、公的な場で用いられることが多いのですが、ここでは奥の部屋に多く使われています。

過去の資料によると、御殿南側の庭は座観式庭園で、回遊による見学をやめ、松代の山並みを借景として、建物からじっくり見てもらう形に変更。現在は、土蔵や御役所などではお茶会などの催しも行われています。

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表座敷。年中行事や公的行事が行われた表の中心となる空間。

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御居間前から表座敷前へと主屋の南側には
雁行して縁をめぐらせています。

国指定史跡  真田邸(新御殿
所在地:長野市松代町松代1
開館時間:9:00~17:00(無休)

真田邸は、「和風住宅vol.21」(2016 年7月発行)に掲載しています。この号のテーマは「その素晴らしさを次の世代にも」。伝統的な建築から、その良さを取り入れながら、暮らしやすさやデザインにこだわった現代の和風住宅まで、事例をたくさん紹介しています。ぜひご覧ください!




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