1つひとつ違う自然木を繊細に組む、数寄屋大工の仕事
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1つひとつ違う自然木を繊細に組む、数寄屋大工の仕事

15歳で大工の道に入り、数寄屋については独学で身につけた鈴木工務店の鈴木繁明さん。数寄屋大工の仕事はどんなものなのか、一般の大工仕事とは何が違うのか、鈴木さんにたずねました。
(「和風住宅23」(2018年7月発行)掲載)

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数寄屋大工の鈴木繁明さん(右)。
鈴木工務店には若い弟子も在籍しており、
技術の継承をするため、日々指導しています。

自然と対峙する仕事

鈴木さんは、自然の木材を組み上げるところに、数寄屋大工の醍醐味があるといいます。自然木には2つとして同じものはなく、同じ産地の杉・ヒノキを使ってもそれぞれ違った風景をつくり出します。木の性質により組み合わせ、寸法を考えたり、元と末の寸法が違う丸太をどう扱うかを検討したり、桁に使った場合の垂木の載せ方なども、細かい調整が必要になります。

自然木を使いこなすためには、木を潰さないような切れる刃物を用意することも基本の一つ。経験や知恵を生かして、異なる自然物に対して、微妙な調整ができるよう格闘するのだといいます。

木材の目利きも重要です。どのような材を使うかを考え、北山丸太や吉野材を選ぶために京都や奈良まで出かけていきます。意匠を考えながら変木を探すなど、自然物に対して繊細に感じ取れる敏感さが必要なのだといいます。

木材の見極め方は、材木店の視点とは少し異なります。削ったり加工したりする中でわかってくる、木材の等級とは別の次元の性質があります。それらは、経験によって積み重ねられたもので、大学などで学べるものではありません。そして、塗装もない自然木は時間が経てば経年変化により、数寄屋の詫びを表現するといいます。

繊細な加減が数寄屋の特徴

「寸の美学 分の繊細」という言葉があります。数寄屋大工の仕事は、太さ細さをミリ以下の単位で繊細に加減することが大切で、決して隙間が見えてはならないそう。「隙三倍」といい、例えば1mmの隙間でも3mmあいているように見えるので、それだけしっかりとした仕事をしなければならないといいます。

「宮大工は大入れ仕事。数寄屋大工は胴付き仕事」。宮大工は大きな材料を使うため、数寄屋に比べて細やかさは少ないけれど、離れてもよく見えるものをつくらなければならない難しさがあるそう。一方、数寄屋は低い目線から見るため、仕事の粗いところが丸見えに。そこで繊細な仕事が求められます。木口と木口の組み合わせは濡れると開いてしまい、乾いても元に戻らなく、濡れた木材は染みがついたり変色したりするので、濡れないよう素屋根をかけるなどの段取りが必要になってくるといいます。

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複雑な屋根の形状により、名栗・丸太・角材を組み合わせます。
納め方を考えるのは数寄屋大工の仕事。

刃物研ぎの修業から

鈴木さんは、新潟で15歳のときに民家をつくっている棟梁に弟子入りしました。いわゆる丁稚奉公(でっちぼうこう)で、小遣いだけしかもらえず、親方の許しがないと休みももらえない。そんな中で師匠の仕事を目の当たりにしながら技術を学んだそう。刃物研ぎからはじめ、5年ほどでようやく刃物が使える状態になったといいます。何もできなかった15歳の子どもに大工技術をおしえてくれた師匠には、いまでも感謝しているそうです。

数寄屋については本場の京都で名工のものなどを見て、独学で身につけました。数寄屋建築を見て、普通の建築とは違い、自然の丸太を自分の力で組み上げるところに興味がわいたといいます。設計者は「ここに丸太を使う」と設計しますが、それらの木をどう組むかは数寄屋大工が考えること。設計者は全体像を考え、細部の木の組み方は数寄屋大工が経験でつくっていくことになります。

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木材やホゾの形によって、
使う鑿(のみ)の形や大きさもさまざま。

数寄屋を進化させる

木を組み合わせる中で、ハンガーボルトやボルト、ビスも見えないところには使っています。隙間があかないように、建築構造を丈夫にするためでもあります。数寄屋を進化させるために、法律上クリアしなければならない点も多く、費用面でもさまざまな工夫により、建築主の負担を少なくすることも考える必要があります。

昔ながらの伝統技術を守っていくことも大切ですが、他方で合理的な考え方で数寄屋を進化させることも考えなければならないと鈴木さんは話します。「数寄屋は高価な印象が強い。1軒単位の数寄屋建築でなくても、一部としてでも一般住宅に取り入れて欲しいと願っています。これからの日本建築を守っていくためには、建築主の力も大事。伝統建築を建てたいという建築主の要望などを形にしていくことで、若い職人たちへの技術の継承が可能になっていく」と、鈴木さんは今でも若い弟子に技術を継承し続けています。

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長大な桁は元末の太さが違います。
上部軒裏を支える丸太は、桔木(はねぎ)状でありながら、
螻羽(けらば)よりも少し引き込んでいます。

鈴木工務店
神奈川県横浜市港北区新羽町427

(写真/志和達彦)

上記の記事は、「和風住宅23」に掲載しています。特集は「数寄屋の魅力を探る」。建築家の住宅事例のほか、近代数寄屋の三巨匠(堀口捨己・吉田五十八・村野藤吾)、地域の設計事務所や工務店による事例、和のある暮らし、和風住宅の基礎知識など、見どころ満載です。ぜひご覧ください(^^)/

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