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ホテルに和モダンのデザインを見る。

多くのホテルでは、宿泊客をもてなすため、客室やホテル内の様々な空間のデザインに工夫を凝らしています。それらの中には、「和モダン」のデザインとしてみるべき点も多くあります。ここでは歴史ある日光金谷ホテルのデザインを見ていきます。
※2009年8月発行「和モダンvol.2」に掲載した内容のため、現状とは異なる場合があります

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洋風から和風デザインへ展開

日光金谷ホテルの歴史は古く、金谷家の当主・金谷善一郎が、宿がなくて困っていたヘボン式ローマ字の考案者ヘボン博士を自宅に招き入れたのが、明治4年(1871年)。そのヘボン博士にすすめられて、2年後には夏の間、日光を訪れる外国人を宿泊させる金谷カッテージ・インを開業しました。日本で最古のリゾートホテルと言われています(上写真の左側が本館、右側が別館)。

明治26年(1893年)に建築途中だった建物を買収して、本格的な純様式の「金谷ホテル」を現在の地に開業しました。その後、昭和11年(1936年)に地面を掘り下げて、1階部分にロビーなどを設置。このため、1階部分と2~3階部分の建築年次が異なるというかたちになっています。

当初は、外国人向けのホテルということで、洋風のスタイルでつくられていました。しかし、大正時代を経て、和風デザインの方が外国人宿泊客に評判が良いということから、和風のデザインが取り入れられるようになっていったのではないかと言われています。

昭和10年(1935年)に本館の西北側につくられた別館も、木造3階建ての外観は和風とし、唐破風の車寄せや、火打窓のような窓を備えています。室内は基本的にはベッドの置かれた洋室ですが、真壁を思わせるデザインに障子・襖を使い、床の間風の飾り棚を設けるなど、和風のデザインを取り入れています。

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本館の客室も、徐々に改装されたようで、最も当初のスタイルを残すものには和風の雰囲気が少なく、柱や貫があらわしになっていません。一方で格天井などにより、和風のデザインを強調した部屋もつくられていたようです。

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写真はデラックスタイプの客室。和のデザインが強調されている。

日光金谷ホテルは、さまざまな時代の品物・遺品を館内で見ることができることから「時間旅行」ができるホテルとも言われています。

柱・貫が和モダンの空間を引き締める

別館にあるコーナーツインルームは、部屋の2面に大きな窓を備えた見晴らしの良い客室。西側には日光連山から男体山までが見渡せます。別館の外観は純和風ですが、室内はすっきりとした「和モダン」の要素がつまったすっきりとしたデザイン。基本はベッドのある洋室でありながら、真壁風のつくりで、壁・天井は漆喰、窓には障子・襖が入っています。床の間を思わせる飾り棚も部屋の一隅にあります。

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写真は別館内のコーナーツインルーム。大きな窓を備えた真壁風。

本館・別館にあるデラックスタイプの客室は、最も和のデザインが強調されています。格天井に柱・貫がきりりと空間を引き締めます。カーテンもつけられていますが、襖・障子はどのタイプの部屋にも設けられています。各室照明や調度品には、歴史を重ねたものが多いのも特徴。また、同じ部屋を探すのが難しいと言われるほどに、それぞれの部屋のデザインが異なっています。

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こちらは、「泊まるだけで元気になれるビタミンホテル」をコンセプトに小山薫堂氏がプロデュースしたオレンジ・スイート。布団で眠る和のスタイルの寝室をつくり、ゆっくりと休める寝具を備えています。窓には襖を入れ、格天井に市松模様に和紙を張るなど、古くからの和風のスタイルを施したデザインになっています。

日光金谷ホテル
1893年(明治26年)に洋室30室の2階建ての「金谷ホテル」としてスタートし、別館(昭和10年)、第二新館(昭和36年)を増築。開業当初の趣を残しながらも近代的ホテルとして今日に至っています。長きにわたるその歴史的価値から、各館は登録有形文化財として登録されています。
https://www.kanayahotel.co.jp/nkh/

「ホテルに和モダンのデザインを見る」を掲載した「和モダンvol.2」は完売していますが、「和モダン」シリーズとして、現在「和MODERN12」まで発行しており、12月18日に新刊「和MODERN13」を発行します!
今号のテーマは「いまと溶け合う」。建築家や地域の工務店の和モダンの住宅事例をたくさん掲載しています。


ありがとうございますm(__)m
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