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京町家はいま…。観光立国をうたいながら、なぜ町家を潰すのか?

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観光立国をうたいながら、なぜ町家を潰すのか

改修した京都の町家に暮らす、イギリス生まれのデービッド・アトキンソンさんは、文化財・歴史的建造物、美術工芸品の修理、施工を手掛ける小西美術工藝社の取締役社長をされています(取材当時)。京町家が次々と壊されていく現状に対して、「先進国を見渡せば、ご先祖様が努力して建てて守ってきた建物を壊してしまうのは犯罪に等しい行為」と語ります。観光立国をうたいながら、なぜ町家を潰すのか…。そして、日本人の多くが、この国でしかできない日本文化の楽しみを嗜まない現状を「精神的に貧乏なこと」だと評しています。日本文化に造詣が深い、アトキンソンさんに話を聞きました。
(2014年12月発行「和風住宅2015」の記事を再編集しています)

町家を潰すことに規制がない

アトキンソンさんがいわゆる外国人留学生として、最初にイギリスから来日したのは1985年。大学で学んだ日本文化のイメージと日本の現実が大きくかけ離れていることに戸惑いを覚えました。近辺に9軒あった町家のうち、2軒がこの1ヵ月の間に取り壊されたといいます。近年、京町家に関心を持ち、住みたいという人も増えている話もありますが、潰される方がはるかに多いと感じています。

京町家についてのセミナーや保存についての話を聞き、京町家への行政などの対応は本当に歯がゆいものに感じたとアトキンソンさんはいいます。「自分が買って、自分が守ればいい」とい思いたち、2~3カ月かけてこの町家を見つけ、1年をかけて改修。できるだけ元のかたちに近いものにしました。

個人が京町家を守っていないこと、国・府・市としても規制すべきところをしていないと、京町家の問題を指摘します。イギリスでは、このような100年以上経過した家は文化財扱いで決して壊したりできないそう。日本の文化財保護予算は、イギリスの6分の1程度。イギリスでは文化財は個人の持ち物ではなく、国民の共有財産であるという考えがあり、文化財修理は観光経済の振興や雇用にもつながり、地方振興の起爆剤になっているところもあります。

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床の間、書院のある伝統的な奥座敷。縁側越しに庭から光が差し込みます。

観光立国をうたうのなら

日本は観光立国といわれていますが、ご都合主義としか思えないと指摘するアトキンソンさん。「観光客として海外に行くときれいな町並みに感激するのに、自分たちの住んでいる町の景観を守るために何かをしたり、京町家には住もうとはしない。素晴らしい文化をなぜ潰してしまうのか理解できないですね。『1200年の都・京都』と自慢するのであれば、それに見合う努力をすべきだと思います」。

日本文化があっての京町家

京町家は多少でも日本的な暮らしをしなければ、保存する意味はありません。茶事や食事にお客様を呼んだり、能楽や琴の演奏を楽しむにはこういう空間が必要なのです。季節ごとの花を飾ったり、掛軸をかけたりすることが、豊かな暮らしを育みます。

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アトキンソンさんは年に2回建具替えをするそう。夏には御簾をしつらえ、冬には襖を建て込みます。それによって室内の空気感も変わり、建具の変化に季節の変わり目を感じることができます。「職人がつくった建具。この場所にはこの障子しか入らない、だから場所がわかるように書いておかないといけない。『北側の外側』と」。そんなところにも、この家への愛着がわくといいます。

この国でなければできない楽しみ

アトキンソンさんは、1999年に裏千家に入門し、茶名「宗真」を拝受しています。茶道との出会いが日本の伝統文化を見直す契機になったといいます。客に対する細かい心遣いを学ぶことができ、何より心がやすらぐそう。「お茶は趣味として楽しんでいます」と、日本人以上に日本の文化を深く考え、豊かな暮らしを営んでいます。

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奥座敷から見える、露地庭の先には茶室があります。

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昔ながらの間取りを受け継いだ1階平面図(概略)

(写真/永野一晃)

デービッド・アトキンソンさん
イギリス生まれ。小西美術工藝社取締役社長。元ゴールドマン・サックス証券会社アナリスト。日本の金融機関の不良債権を暴くレポートで注目をあびる。2009年に国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社入社。2011年同会長兼社長。

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デービッド・アトキンソンさんが住む京町家は、「和風住宅2015」に掲載しています。


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