住まいにおける6つの災害リスク
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住まいにおける6つの災害リスク

大地震、台風による風害や水害…。日本は毎年のように災害に襲われる「災害多発列島」と化しています。頻発する災害から家族を守る最後の砦がマイホームです。ここでは、家づくりの際に考えるべき災害対策の基本を解説します。

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[上図]は住まいにおける災害リスクをピックアップしたもの。いずれも命や財産、健康を失いかねない大きなリスクです。

家づくりの際にはデザインや間取り、キッチンやバスなどの住宅設備、そしてコストに目が向きがちですが、災害リスクを避けることを、言い換えれば「家族の安全」を最優先に考えるべきです。

家=「巣」だとイメージしてみてください。巣は生き物にとって身体を休めることができる、子育てができる安全な場所です。安全が確保されて初めて安心でき、心からくつろげ、暮らしを楽しむことができます。

災害リスクの基本を知ったうえで信頼できるプロに相談して、安全で安心できる巣としての住まいを手に入れましょう。特に大事なのは建物の構造・性能です。

住む場所が関わるリスク

どこに住むか(土地・住宅を購入するか)を考える際、利便性や学区、親世帯との距離、コストを優先しがちですが、その土地の災害リスク・将来の安全の観点からも考えるべきでしょう。

①水害リスク
2019年の台風19号では「ハザードマップ」の想定どおりに水害が発生しました。ハザードマップとそれを活用した水害リスク対策については、これまでに解説しているのでそちらを参照ください。

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国は住宅・土地の売却や賃貸などを扱う不動産業者に対して、大雨が降った際の水害リスクを購入希望者に説明するよう義務付ける予定です。ですが、義務付けられる前でも水害リスクについては必ず確認してください。

②土砂崩れ・崖崩れリスク
台風19号によって東北の戸建て住宅の一部が崖から崩れ落ちました。幸いご家族は旅行中で無事でしたが、生活再建は簡単ではありません。

山の斜面や崖の近くは地価が安いことも多くお値打ちに見えるかもしれませんが、購入を避けたほうが無難です。

③地盤沈下・液状化リスク
土地には揺れやすい「弱い地盤」と揺れにくい「弱い地盤」があります。
弱い地盤は地震時に建物が被害を受けやすく、地盤沈下も起きやすい。

地盤沈下が起きると建物にひび割れが出たり、家が傾きながら沈み込む「不同沈下」が起きたりします。また、大地震時には液状化が発生する可能性があり、これも不同沈下の原因となります。

これらのリスクは「地盤調査」や「液状化判定」などで推し測ることができますし、これらの結果をマップ化したデータも公開されていて参考にできます。リスクが高い地盤でも改良工事を行ったうえで適切な構造とすればリスクを下げることができますが、できる限り強い地盤の土地を選びましょう。

構造・性能が関わるリスク

④大地震時の損壊・倒壊リスク
大地震のたびに住宅の耐震性能が話題になります。現在は建築基準法で新築住宅に一定の耐震性能を義務付けていますが、既存の住宅の約2割は耐震性能不足で、大地震時に損壊・倒壊するリスクがあります。

また、建築基準法を満たしていても安心はできません。「住宅性能表示制度」という国による任意の有償制度があり、「耐震等級」と呼ぶ耐震性能レベルが設けられていて、建築基準法と同等の強さが等級1、建築基準法の1.5倍の地震に耐える強さが等級3と規定されています。震度6強~震度7の大地震の際、家が倒壊・崩壊せず家族が亡くなることはほぼないけれど、住み続けられる保証ができない耐震性能が等級1=建築基準法レベルなのです。大地震後もその家に住み続けることができる耐震性能が等級3です。

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耐震等級3を実現するには部材や設計の工夫が必要なのでそのぶん高くなりますが、仮に等級1と比べて100万円高くなるとしても、長期の安心を実現する耐震等級3を強くお勧めします。仮に100万円を惜しんだことで震災後に家を失ってしまうのは割に合いません。生活基盤を失いますし、建て替え費用は数千万円にのぼるからです。

⑤台風時の雨漏り・損壊リスク
2019年の台風15号では雨漏りしたり、飛来物で窓ガラスが割れたり、そこから風が吹き込んで屋根が飛んだりといった被害が出ました。

⑥インフラ停止リスク
災害時に電気・ガス・水道といったインフラが止まると、家に住み続けることができないばかりか、冬や夏に暖冷房が使えないと凍死や熱中症など命すら危なくなります。高断熱化する、太陽光発電&蓄電池もしくはEV(電気自動車)車・PHV(プラグインハイブリッド)車を導入する、貯水タンクや雨水タンクを設けるといった対策をとることで、インフラ停止リスクを軽減できます。

高断熱化とは断熱材や樹脂窓などの断熱性能の高い部材で住宅をくるみ、外気温の影響を受けにくくすること。学識経験者が提唱する「HEAT20(ヒートにじゅう)」という物差しの「G2」レベルまで高断熱化すれば、暖冷房が使えなくても凍死や熱中症死のリスクは各段に下がります。

蓄電池は巨大なバッテリーです。EV車・PHV車も巨大なバッテリーを積んでいます。これらを導入すれば充電しておいた電気が太陽光発電した電気を貯めて停電時に使うことができ、災害時の非常電源になります。気象警報発令と連動し自動充電されるシステムなども登場、防災設備として進化中です。予算に余裕があれば検討しましょう。

安全な家はメリットがいっぱい

まとめると、水害や地盤のリスクが少ない土地を選び、建物の耐震性能・断熱性能を高め、そのうえで太陽光発電&蓄電池/EV車・PHV車を検討することが、災害多発列島でのこれからの家づくり=安全・安心な巣としての住まいの基本です。これらの対策にはコストもかかりますが、以下のメリットを考えると十分相殺できるように思います。

・安全な土地を選ぶメリット
水害や地盤関連リスクが高い土地は今後地価が下落する可能性があり、資産価値という点ではマイナス要因です。逆に安全な土地ほど地価下落リスクは少なくなります。

・耐震性能を高めるメリット
プロがきちんとシミュレーションを行い(これを構造計算と呼びます)、耐震性能を高めると、柱や壁のない広い空間や開放的な吹き抜け、大きな開口部(窓)をつくることができ、楽しい暮らしができる豊かな空間になります(その場合、高断熱化しないと室内が寒く・暑くなるので注意が必要です)。また、耐震性能が高い家は基本的に風にも積雪にも強くなります。

・断熱性能を高めるメリット
高断熱住宅は健康リスクも低くなります。たとえば、冬の室内の温度差によって血圧や脈拍が乱高下し、失神や不整脈、心筋梗塞や脳梗塞などが起きる「ヒートショック」。その死亡者数は、実に交通事故の倍以上。高断熱化したうえで適切な暖房計画を行うことで室内の温度差を小さくでき、ヒートショックの予防につながります。

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温度差が小さい=家全体が暖かく涼しいと、万病のもとである冷えや、酷暑で増えている室内熱中症の予防にもなります。厚着する必要がなく、体が楽になり、家のなかがとにかく快適です。楽で快適だと家にいたくなり、人を呼びたくなり、家族や友人とのコミュニケーションが活発になります。

高断熱住宅は熱の出入りが少なくなるので光熱費も少なくて済み、その削減効果で高断熱化のコストアップ分を取り返すことも可能です。

・太陽光+蓄電池/電動車のメリット
太陽発電で創った電気は国が買い取ってくれますが、その買取り価格は毎年下がっています。これからは昼に発電した電力を蓄電池やEV車・PHV車に貯めて夜や曇りの日、災害時に使う「自家消費」と呼ばれるスタイルが主流になります。お得という点では、EV車・PHV車を蓄電池として使い、さらに太陽光で車を充電してガソリン代を不要にするとさらにお得になります。

・子どもたちの未来に
台風や水害の増加・大型化と温暖化は関係があると考えられています(台風の直接原因は海水面温度の上昇、海面水位の上昇は高潮被害や沿岸浸食などの原因)。気温の上昇とともに、1901~2010年の間に世界の平均海面水位は19㎝上昇しています[下図]。また、日本近海における、2018年までの約100年間の平均海面水温の上昇率は+1.12℃と言われています。これからの日本は毎年のように大きな台風や水害に襲われ、さらに暖冬化・灼熱化も進み、大地震のリスクも高まっていき、一層「災害多発列島」化することが予想されます。

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高断熱化や太陽光+蓄電池の活用等でエネルギーをできるだけ使わない、温室効果ガスをできるだけ発生しない住まいとすることで、温暖化対策に、子どもたちの未来をよりよく変えることに貢献できます。

国も、高断熱化で使うエネルギーを減らし、太陽光発電や蓄電池などでエネルギーを創って、エネルギー消費をゼロ以下とする「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)を補助金などで推進しています。また、本書「だん」も高断熱住宅の普及に貢献するために発行しています。信頼できるプロとは?地元の工務店を選択肢に

高性能住宅専門誌「だん」では、顧客や地球環境に貢献するために高断熱住宅に取り組み、設計力・技術力を高める努力を続けている地域の工務店をパートナーと位置づけています。また、地元で長く経営している工務店は、その土地の過去の災害などから学び、地元の水害・地盤リスクを熟知していることが多いと言えます。

こうした工務店のなかには信頼できるプロフェッショナルが必ず存在します。大きなハウスメーカーではなく工務店を選択肢にパートナーを選ぶことをお勧めします。

※本記事は「だん06」に掲載されています

★高断熱住宅専門誌「だん」についてはこちらをご覧ください





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