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温熱環境だけでなく地域との関係も変える高性能窓

快適な暮らしに欠かせない「窓」について、温熱環境と地域との関係性という視点から、株式会社チームネット代表取締役の甲斐徹郎さんにお話を伺いました。※高断熱住宅専門誌『だん』07「窓が変える暮らし」から一部抜粋

わたしの仕事は、快適な暮らしと家族の関係、あるいは家族と地域の関係をデザインすることです。特に、温熱環境の快適性、そして地域で孤立しないための人間関係の構築が重要だとの考えに基づいて仕事をしてきました。

数年前、予防医学の第一人者である星旦二先生と出会いました。星先生は医学的な立場から、わたしと同様に温熱環境と人間関係が健康にとって重要だと主張されており、以来さまざまな場面でご一緒させていただきました。2018年に先生の研究と実践の成果を『人生を変える住まいと健康のリノベーション』(新建新聞社)という本にまとめました。ご興味のある方は、こちらもぜひお読みください。

さて、改めてこの記事のテーマである「窓」について考えてみましょう。窓は、わたしや星先生が主張する、2つの要素に大きく影響する存在です。

ひとつは「温熱環境」、もうひとつが「外(地域)とのつながり」です。
 
窓まわりの寒さは「体感温度」のせい
はじめに、「温熱環境」についてのお話をします。

窓の性能差による室内環境の違いを体感できる、簡単な実験があります。まず、ガラス1枚(単板)、2枚ガラス(複層ガラス)、2枚ガラスに金属の膜を付着させている高性能ガラス(Low-E複層ガラス)の3種類のガラスの下に保冷材をあてがって、外気温0℃の状態を再現します。室温が20℃前後の場合、単板ガラスの表面は2℃~3℃まで下がり、結露でびっしょり濡れてしまいます。複層ガラスになると12℃~13℃、Low-Eガラスは18℃と、性能が高いほど室温との差は小さくなっていきます。窓が大きくなるほど、このガラス表面と室温の温度差の影響が大きくなるのです。

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ガラスの表面温度が下がると、「冷放射」と「コールドドラフト」という現象が起こり、それが体感温度を下げる原因となります。冷放射は、放射の原理によって、室温とは関係なく体感温度が下がる現象です。体感温度は「(周囲の表面温度+気温)÷2」の値だと言われますが、単板ガラスで表面温度が2℃だとすると、室温が20℃でも、窓に近くなると体感温度は11℃にまで下がってしまいます。

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コールドドラフトは、窓の周囲の空気が冷やされて重くなり、床に流れ落ちていく現象です(上図)。冷たい空気は、くるぶしのあたりまで層になって広がるので、足元が寒く感じるようになります。

室内の熱の6割近くが窓から逃げるといわれています。室内の温熱環境には壁や天井、床の断熱も影響しますが、窓の影響が特に大きいことを知っておきましょう。

夏はパーゴラや「北側の窓」で快適に
ここまでは冬のお話でしたが、夏には逆のことが起こります。冬は、窓から差し込む日射が室内を暖め、いったん温まった室温は窓の断熱性が高ければ下がりづらくなります。冬に日射熱を取り込むのも窓の役目です。

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しかし、夏に日射熱を取り込んでしまうと、室内はとても暑くなります。また、日射によって表面温度が高くなった室内の床や壁に熱が蓄えられ、その熱が夜になってもなかなか抜けないという現象が起こります。そこで、夏を快適に過ごすための、窓まわりの工夫を2つ紹介しましょう。

ひとつは、窓の外にパーゴラ(植物棚)などで日陰を作り、下にデッキなどを設置して「アウトドアリビング」を作ることです。完全に日射を遮る空間が窓の外にあると、直射日光を遮るだけではなく、周辺の表面温度も下がるので、室内に侵入する熱の量が大幅に減るのです。

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ある事例では、それまで冷房をつけないと36℃にまで上がっていた室温が27℃まで下がり、外気温より10℃近くも低くなりました。

もうひとつ、夏を涼しくするためにきちんと考えたいのが「北側の窓」です。家の北側には、たいていトイレや浴室など、窓を開けられないような空間が配置されていますね。こういう間取りでは、南にあるリビングの窓を開けたとしても、風がうまく抜けていかないのです。ですから、北側にちゃんと開けられる窓を作って、風の出口を作ってあげましょう。

玄関が北側にある家も多いですが、例えば玄関の周りに窓を作りつつ、プライバシーを守るためにも植栽をして坪庭のようなところを作る、といった方法が考えられます。植栽も、北と南では役割が異なり、南の植栽は夏の強い日射を遮るのに対し、北側の植栽は、水分の排出により周辺の温度を下げ(蒸散作用)、窓との間に涼しい空気を作ってくれます。それをうまく室内に取り込めれば、より快適な環境になるでしょう。

窓が住まいを外(地域)に開く
次は2つ目の「外(地域)とのつながり」のお話です。

住まい手と地域とのつながりには、健康と密接な関係があります。医学博士の星先生の調査によると、70歳以上で地域との交流がない人は、調査開始から6年後にはその7割が亡くなられていました。逆に、常に地域との交流を持ち続けていた人々の死亡率は、1割未満にとどまっていたのです。

歳をとって体力が衰えると、自宅が暮らしの中心にならざるを得ません。地域から孤立しないためにも、自宅を地域とのつながりの拠点にすることが大切なのですが、実はこれにも住まいのかたち、特に窓が大きな役割を果たすのです。

具体的な例として、家族が使用する玄関とは別に庭に通じるゲスト用のエントランスを設けたリノベーション事例があります。住まい手の方は元々地域の方々との交流もそれなりにはありましたが、外から庭に入りやすい動線をつくったところ、地域の人との交流がより深まりました。庭からリビングの窓を開けて直接アクセスすると、玄関から入るより「お邪魔する」感覚が、ぐんと薄れたためです。

しかも、外出の機会も増えました。人が常に集まっていると、情報がたくさん集まり、何かをしたいという気持ちが生まれて活動的になっていったのです。逆に、孤立している人は情報が入らず活動量が減り、代謝が悪くなって健康を損なってしまうのです。


断熱改修はいつやるべき?
以下、全文は雑誌「だん」03に掲載しています。

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