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住まい×健康の専門家が解説!高断熱住宅で暮らすメリット(後編)

高断熱住宅で暮らすとどんなメリットがあるのか。どうして高断熱住宅に住むべきなのか。住まいと健康、そして断熱性能の関係について調査・研究を続けている近畿大学建築学部学部長の岩前篤教授に解説いただきました。

高断熱住宅は暮らしやすい家。
家で過ごす時間も増えた

「毛布が一枚減った」「洗面所も15~20℃に」
私たちは高断熱住宅に住んだ家族の調査を行いました。高断熱化によって間取りなどのプランニングがより自由になり、それは家族の生活をより良く変えることにつながっていました。

まずご紹介するのは、4人家族が2016年3月から住み始めた鹿児島県の家です。延べ床面積は121㎡。断熱性能を表す物差し「UA値」が0.6(小さいほうが高性能)、気密性能を表す物差し「C値」が0.54(同じく小さいほうが高性能)、「HEAT20」だとG1程度の高断熱住宅です。

以前は築20年の鉄筋コンクリート造3階建ての1階にお住まいで、窓に結露が発生、カビ臭も気になったそうですが、現在はまったく気にならなくなったとのこと。

就寝時には掛布団1枚と毛布2枚を使っていたそうですが、毛布の枚数が1枚減りました。

通常は冬寒くなりヒートショックが心配される洗面所の温度も15~20℃の間を保っていました。寝室も、外の気温が0℃前後になる夜でも就寝時にしばらくエアコンで暖房、また起床時にもエアコンで暖房することで、13℃前後以下にはならないそう。

こうした熱環境になったこともあって、お子さんたちはダイニングで勉強、キッチンから奥さまがその様子をうかがう、といった風景が当たり前に。さらには「家の中にいたいと思うことが多くなり、以前よりも家で過ごす時間が増えた」とのことでした。


「お風呂のお湯が冷めにくく」「ひどい結露とカビが解消」
次にご紹介するのも鹿児島の5人家族の家。2015年3月入居で、延べ床面積は109㎡。UA値は0.62、C値は1.6です。

以前は築15年の鉄筋コンクリート造2階建ての2階にお住まいでした。お湯がすぐに冷めてしまうため入浴時間を家族で合わせていたそうですが、 現在はお湯が冷めにくいため無理に合わせる必要がなくなり、入浴時間はバラバラに。高断熱住宅はお風呂に張ったお湯も冷めにくくなるのです。

また、冬場の結露がひどく、フローリング、タンスの裏、カーテンといった場所でカビが発生していましたが、現在は改善しました。

昔は家全体が寒いと感じていたそうですが、現在はトイレが少し温度が低いと感じる程度。その対策がユニークで、就寝時にトイレのドアを少しだけ開けておくというもの。これだけで朝起きたときはトイレまで暖かく、快適に用を足すことができる。研究者には思いつかない生活の知恵です。

冬場の暖房はリビングのエアコンのみ。これで室温は20~26℃前後をキープ。リビングの中心に吹き抜けがあり、ここを通じてリビングの暖気が2階に上がっていきます。エアコンを止めて外出しても、帰ってきた時にもまだ、暖かさは残っているそうです。

寝室が暖かくなったことで、以前は冬の就寝時には毛布1枚と布団1枚をかけていたそうですが、現在は毛布を使わずに済んでいます。寝つきも良くなりました。

こちらのご家族も「休日家で過ごす時間が増えた」という点がポイントです。

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寒くない吹き抜け実現。プランの自由度も増す
この調査で伺った高断熱住宅では、冬場のリビング・寝室・洗面所の室温の平均温度が20℃前後、最低温度の平均でも15℃以上、室内の温度差も1~2℃程度度となっていて、健康リスクの低減が期待できます。

冬場でも暖かさを維持できるようになったことで、7割超の家族が「薄着になった」と回答。これは前述のストレス軽減につながるうえ、洗濯の負担も少なくなります。

吹き抜けのあるお宅も多かったのですが、高断熱化によって吹き抜けを設けても寒くなくなるため、プランニングが豊になり、吹き抜けを通して家族のコミュニケーションを図ることもできます。

調査住宅のなかには、キッチンの真上に吹き抜けをとっている例も。キッチンの真上を吹き抜けにすると調理時の煙や匂いが吹き抜けを通じて昇るので、ご法度です。ですがこの住宅では断熱性能と気密性能を高め、強力なレンジフードで換気を行うことでこの問題を解決していました。

気密性能が低い住宅は隙間が多く、あちこちから空気が漏れるため、換気設備が働きにくくなります。一方、高気密住宅は換気設備が機能します。高断熱高気密化によって、吹き抜けから調理中のキッチンを眺めてコミュニケーションが取れる、いわば「キッチンスタジアム」を実現できたのです。

また、キッチン、洗面や浴室が寒いと家事がおっくうになりがちですが、高断熱化によってこれらの空間が暖かくなることで、家事に対する心身のストレスを軽減できます。その結果、従来の水まわり動線から解放され、2階に浴室を設けるなどプランニングも自由になります。


本当の家族団らんとは?相互依存から自立共生へ
断熱性能が低い家では家族がこたつやストーブの周りに集まって「採暖」しながら過ごす時間が増えます。これを「家族団らん」と呼ぶ人もいますが、いまは一緒にいてもスマホを見たりしていて、「一緒にいる=団らん」とは言えないでしょう。

高断熱住宅は家中が暖かいので、家族がどこにいてもいい。一方で、吹き抜けけなどオープンなプランにできるので、どこにいても家族の気配を感じコミュニケーションがとれる。思春期のお子さんや介護中のご両親のいる家族では距離感が難しく、神経をすり減らすことも少なくありませんが、このつかず離れずの距離感は、関係も気持ちも楽にするのではないでしょうか。

調査で伺ったお宅では、一緒にいる時間は減った場合でも、ご家族の信頼関係を感じました。前述のように「家にいる時間が長くなった」との声も多く、高断熱化によって家族の関係が損なわれているという印象はありません。むしろ、家族の関係が「相互依存」から「自立共生」へとシフトしていく、そんな可能性を感じました。

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このように高断熱化によって住まいが変わると暮らしも変わります。高断熱受託で健康長寿、そして豊かな暮らしを手に入れてほしいと思います。(談・文責:「だん」編集部)

※本記事は「だん02」に掲載されています

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